9月1日は「防災の日」です。

近年、地震や台風、集中豪雨といった自然災害が頻発し、企業経営において「従業員の安全確保」と「企業の事業継続計画(BCP対策)」という2つの観点がますます重要視されています。

従業員の安全確保は、企業が果たすべき社会的責任の最たるものです。災害発生時に、オフィスで働く人々の命を守るための備えは、もはや義務と言えるでしょう。また、災害による事業の停止は、企業の存続そのものを脅かします。BCP対策は、災害時にも事業を継続・早期復旧させるための計画であり、企業のレジリエンス(強靭性)を高める上で不可欠です。

このような背景から、オフィスにおける防災意識は高まり、単なる避難訓練だけでなく、より実践的な備えが求められるようになりました。特に、災害発生直後を乗り切るための「オフィスの備蓄」は、従業員の生命を守り、事業を継続させるための生命線となります。

万が一の非常事態に備えて、日常的に防災訓練の実施や防災グッズ準備をしておくと、災害時に従業員が慌てることなくスムーズに行動できます。

本コラムでは、オフィスでの災害に備える上で不可欠な「備蓄」の重要性と、その具体的な内容について詳しく解説します。オフィスに備えておくと安心な防災グッズも紹介するので、「災害に強いオフィス創り」に向けて、企業の防災担当の方は具体的な対策の参考としてください。

 

1.オフィスにおける防災の必要性

 オフィス防災が必要な背景には「従業員の安全確保」と「企業の事業継続計画(BCP対策)」の2つの観点があります。

まず、災害が起こった際、企業には従業員の安全を確保する「安全配慮義務」があります。この義務については労働契約法の第五条に定められており、災害時に備えて企業が十分な防災対策を行う必要性が明記されています。万が一この義務を怠り、災害時に従業員に被害が出てしまうと、企業に法的責任が発生するケースもあるので注意が必要です(※)。

※参考:e-GOV.「労働契約法」.(参照2020-04-01)

また、災害発生時に従業員の一人ひとりが自分の役割に沿って行動し、自身の身を守る行動を取ったり企業の情報資産を守ったりすると、企業の事業継続につながります。そのため、企業が定期的な防災訓練を行い、災害時の行動マニュアルを作成して従業員に周知することで、災害が起きた後も企業活動を安定して継続がしやすいでしょう。 

 

以上のことから、防災対策は、単なるコストではなく、従業員の命と事業を守るための重要な投資であるという認識を持つことが不可欠です。

 

2.オフィスで想定すべき主な災害リスク

 オフィスにおける災害リスクは多岐にわたりますが、地震や水害などの自然災害や火災があります。

首都圏など都市部では「帰宅困難」が既に大きな課題として認識されています。大規模地震や交通機関の麻痺によって、従業員がオフィスに留まらざるを得ない状況では、まず飲料水や食料の確保が必須です。また、停電や空調停止による「暖の確保」も重要で、冬季には体調悪化を招く恐れがあります。さらに断水時にはトイレの使用が制限され、衛生環境の悪化が感染症リスクにつながります。

これらの事態に備え、企業は備蓄品や非常用トイレの設置、パーティションを活用した一時的な休憩スペースの確保など、従業員の安全と安心を支える仕組みを整えることが求められます。災害発生時にオフィスが「避難の場」となることを前提に、危機管理体制を再点検することが企業防災の第一歩です。

地震や水害の発生は予測が難しいため、災害時に従業員の安全を守り、二次被害を防ぐための備えが大切です。例えば、重量のあるオフィス家具を壁や床に固定したり、窓ガラスに飛散防止シートを貼ったりするなどです。また、オフィスが浸水すると電子機器が水没してオフィスの機能が失われたり、機器の交換に膨大なコストがかかったりするので、電気設備を上の階層に移転しておくのも良い対策でしょう。

さらに、オフィスで使用しているさまざまな電子機器の配線に起因する火災のリスクも想定しておきましょう。複雑なタコ足配線や、電源プラグ・コードの経年劣化を放置すると、発熱・発火して火災につながる恐れがあります。オフィスで火災が起きると、従業員のけがにつながったり、大切なデータが失われたりするだけではなく、他のテナントにも悪影響が出てしまう可能性があります。火災を防ぐためにも、定期的な配線の見直しや電源プラグ周辺の掃除を行って対策をしましょう。

 

3.オフィスで実施したい防災の取り組み

オフィスで実施したい防災の取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、代表的な防災の取り組み例を4つ見ていきましょう。

防災マニュアルの作成・配布

 オフィスで実施できる防災対策の一つに、防災マニュアルの作成・配布があります。

災害時、従業員一人ひとりがどのように行動するかを把握していないと、大きな混乱を招きやすくなります。このような混乱を防ぐには、災害時の各チームの役割やリーダー、業務の対応方法や避難時の動線などを防災マニュアルに明記しておきましょう。

また防災マニュアルを作成したら、各部署やチームで内容を読み合わせるなどして、全従業員への周知を図ることも重要です。さらに、防災マニュアルが形骸化しないように、年に1回程度は内容の見直しを行い、必要に応じて内容を修正し続けましょう。

定期的な防災訓練の実施

定期的な防災訓練の実施も、重要な防災対策です。

防災訓練は、各オフィスで年1回以上行っておくのが理想的です。その際、自治体が発行しているハザードマップを確認して、適切な避難地域や経路を全従業員で確認しておきましょう。また防災訓練の際に、オフィスに設置されている消化器の使用方法を共有しておくことも大切です。テレワークをしている従業員が多い企業では、Webを通じて防災訓練に参加できる体制を整えておくと、従業員の防災意識の向上を図りやすいでしょう。

安否確認手段の確保

従業員の安否確認手段の確保も、オフィスの防災取り組みの一環です。

災害発生時は一時的に通信障害が発生する可能性も高いです。そのため、従業員の安否確認ができるシステムを導入したり、電話やEメール、SNSなど複数の連絡手段を確保したりしましょう。また、災害発生時に従業員の安否確認がスムーズにできるような緊急連絡網を設定し、従業員の家族の連絡先を把握しておくと安心です。

オフィスレイアウトの見直し

防災の観点から、オフィスのレイアウトを見直すことも効果的です。 災害発生時に従業員がスムーズに避難できるよう、十分な通路幅を確保したオフィスレイアウトにしましょう。オフィス家具の転倒で避難経路が塞がれないように、背の高い大きな家具の配置にも工夫が必要です。また非常口の前に物を置かないように、日頃からオフィス内の整理整頓をしっかりと行っておきましょう。

 

4.これから本格的に防災対策を始める企業へ

 企業の防災担当は、主に総務部人事部、または施設管理部が担うことが一般的です。これらの部署では、従業員の安全確保、社内設備の維持管理、BCP(事業継続計画)の策定といった、企業全体の基盤を支える役割を担っています。

担当者の職種や役職名としては、防火管理者防災管理者といった消防法に基づく資格を持つ担当者、あるいは危機管理担当者BCP推進担当者といった専門職が設けられている場合もあります。特に大規模な企業では、各部署から選出されたメンバーで構成される防災委員会災害対策本部を設置し、全社的な取り組みとして防災計画を進めています。

防災は、特定の部署や担当者だけの課題ではありませんが、これらの部署が中心となって、備蓄品の選定や備蓄場所の確保、防災訓練の実施など、具体的な活動を推進しています。

オフィスの備蓄は、防災対策をこれから本格的に始める企業や、備蓄計画を見直したいと考えている総務担当者の方々にとって、重要な情報となるはずです。

 

5.近年の防災備蓄の歴史

防災備蓄は、災害の教訓を活かしながら常に進化しています。過去の大きな災害を機に、備蓄品やその考え方に変化が起きてきました。

阪神・淡路大震災(1995年)

この震災では、ライフラインの寸断や帰宅困難者が多数発生しました。これを機に、乾パンなどのシンプルな非常食だけでなく、水やお湯で調理できるアルファ化米が注目を集めました。長期保存が可能で、誰でも簡単に食べられる利便性が高く評価され、自治体や企業での備蓄が進むきっかけとなりました。また、簡易トイレの重要性も広く認識されるようになりました。

東日本大震災(2011年)

この震災は、広範囲にわたる甚大な被害をもたらしました。被災地の企業は、サプライチェーンの寸断や停電、交通網の麻痺などにより、事業継続の難しさを痛感しました。この経験から、企業の防災対策は「従業員の安否確認」や「避難訓練」だけでなく、事業継続計画(BCP)の策定が不可欠であるという認識が広まりました。また、災害後の情報収集手段として、手回し充電ラジオやモバイルバッテリーの備蓄も一般的になりました。

近年のトレンド:ローリングストック法

最近のトレンドは、「ローリングストック法」です。これは、非常食を日常的に消費し、食べた分だけ新しく買い足す方法です。常に新鮮な備蓄品を維持できるだけでなく、いざという時に食べ慣れた味の食料があることで、精神的な安心感にも繋がります。企業でも、社員食堂や休憩スペースで非常食を消費し、備蓄品を効率的に管理する動きが出てきています。

これらから、災害のたびに防災備蓄の考え方や内容が見直されてきたことがわかります。

 

6.2025年 オフィスに備えるべき防災グッズ:ベスト3

 日頃からオフィスに備えておきたい防災グッズには、さまざまなものがありますが、既に備えている企業情報も踏まえたベスト3をご紹介いたします。

第1位:水と食料

まず、オフィスに備えておきたい防災グッズに、飲料水や非常食などがあります。災害の規模にもよりますが、災害の被害が大きいと、数日オフィスに待機する必要がある従業員も出てくるでしょう。水道水が止まる可能性もあるので、飲料水や缶詰・レトルト食品などの非常食を備蓄しておく必要があります。乾パンの他にも、アルファ化米は、炊飯したご飯を急速乾燥させた保存食です。お湯や水を加えるだけで、炊きたてのようなご飯に戻るため、火や電気を使えない災害時に非常に役立ちます。一般的に5年以上の長期保存が可能です。定期的な入れ替えの負担が少なく、備蓄管理がしやすいです。

災害発生時は、ライフラインが停止する可能性が高く、特に水分は命に直結します。従業員が数日間オフィスに留まることを想定し、1人あたり1日3リットルの水を目安に備蓄しましょう。また、非常食は調理不要で長期保存が可能なものが理想です。最低でも3日分の備蓄が推奨されています。

第2位:簡易トイレ

災害時、水道や電気などのライフラインが停止してしまうと、建物のトイレが使用できなくなるリスクがあります。トイレが使えない環境は、衛生状態の悪化や健康被害につながるだけでなく、精神的なストレスも大きくなります。簡易トイレは、水を流せない状況でも排泄物を固めて処理できるため、衛生環境を保ち、二次災害を防ぐ上で非常に重要です。

そのような状況でも衛生的な環境を保てるよう、オフィス内に簡易トイレを備えておきましょう。簡易トイレには、携帯できるタイプや既存の便座に設置して使用するタイプがあります。こちらも、従業員1人当たり3日分以上の量を備えておくと安心です。

パーテーションラボではオフィス内に備えておける簡易トイレも取り扱っています。既存のトイレ便座に被せて使用するタイプの「BESToilet(ベストイレ)」や「トイレのミカタ」はビニール袋と凝固剤がセットになった衛生的な簡易トイレです。

第3位:救急セットと医薬品

災害時には予期せぬ怪我や体調不良が発生します。消毒液、絆創膏、包帯、鎮痛剤など、基本的な医薬品をまとめて救急セットとして備えておきましょう。特に、社員の中に持病を持つ人がいる場合は、必要な医薬品を会社でも備蓄しておくか、各自が携帯するよう周知を徹底することが大切です。

 

これらベスト3のアイテムは、災害発生後の72時間(3日間)を生き延びるために不可欠なものです。この72時間は、救助活動が本格的に始まるまでの、いわば「自助」の期間とされています。この間に備蓄品が尽きることがないよう、定期的に中身を確認し、賞味期限切れがないか管理しましょう。

他にも、大規模な災害時に役立つヘルメットや防炎マスク、発電機、救助用工具、軍手なども備えておきましょう。けが人や感染症患者の発生に備えて、マスクや消毒液などを含む基本的な救急セットを用意しておくことも大切です。 これらの防災グッズは従業員の誰もが把握できる場所に保管し、定期的な点検や見直しを行いながら管理しましょう。

 

 

7.被災経験を通じた「防災対策」と「オフィス備蓄」

パーテーションラボのお客様の声1:「災害時のトイレ問題」

『実際に災害を経験して、最も困ったのは「トイレ」でした。地震でライフラインが止まり、オフィスビルの水洗トイレが使えなくなったんです。最初は従業員みんなで我慢していましたが、時間が経つにつれて衛生面が非常に気になりました。特に女性社員は大きなストレスを感じていたようです。備蓄品に簡易トイレはありましたが、数が少なく、あっという間になくなってしまいました。この経験から、災害時に備えるべきは食料や水だけでなく、衛生環境を保つための備品がいかに重要かを痛感しました。今では、従業員数に合わせて十分な数の簡易トイレと、ウェットティッシュや消毒液などを多めに備えています。』

パーテーションラボのお客様の声2:備蓄品が命綱になった日

『以前に、地方出張先の帰京予定の日に地震があり、電車も止まり、帰宅困難となってしまったことがありました。支社オフィスには30人ほどの社員が残ることになり、一晩を会社で過ごすことになりました。スマートフォンは充電が切れ、交通情報もわからず、不安な夜でした。幸い、会社には防災備蓄品が十分に用意されていました。水やアルファ化米、長期保存できるパンなどがあり、全員が最低限の食事をとることができました。助かったのは、毛布と寝袋です。夜はかなり冷え込みましたが、おかげで体を休めることができました。もし備蓄がなければ、コンビニも閉まっていて、どうなっていたか想像するだけで怖いです。この経験を通して、防災備蓄は「命綱」だと感じています。今でもあの時の会社が準備してくれていた備蓄品には心から感謝しています。』

パーテーションラボのお客様の声3:防災は企業の信頼性そのもの

『(総合化学関係の製造業)経営者として、防災は単なるコストではなく、経営戦略の一環だと考えるようになりました。これはほんとうにそう感じます。震災後、多くの企業が事業停止に追い込まれる中、日頃からBCP対策に力を入れていたおかげで、当社は比較的早く業務を再開することができました。社員の安全を確保できたことはもちろん、取引先からも「あの会社は信頼できる」と評価され、結果的に、その後の受注量や企業のブランド価値向上にも繋がりました。当時は「備蓄にそこまでお金をかける必要があるのか?」という声もありましたが、あの時投資した費用は、何倍もの価値になって返ってきたと確信しています。防災対策は、従業員の命を守るだけでなく、企業そのものを守るための、重要な投資です。』

 

まとめ|人命と事業を守る、企業の「防災投資」

 オフィスの防災対策は各企業に課せられている義務です。自然災害や火災などから従業員を守れるように、防災マニュアルの作成や周知、防災訓練の実施をしましょう。万が一の事態に備えて、従業員の安否確認の方法を複数設定しておいたり、スムーズな避難経路を確保できるオフィスレイアウトを設計したりしましょう。

他にも、パーテーションラボでは、災害時に簡易的な間仕切りとしても使用できる「イージーウォール」も取りそろえています。従業員がオフィスに数日滞在する際にプライバシーを守る間仕切りとして使用したり、けが人や病人を介抱するエリアを設置できたりします。

 

企業の従業員数に合わせて大量購入の対応も可能なため、企業の防災対策を検討している方はお気軽にご相談ください。

 

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9月1日 防災の日 | オフィスの防災対策

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